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リニア反対動画の問題点・疑問点を書き出してみる

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全国民が見るべき動画。リニア新幹線のバカさ加減がおもしろおかしくわかる~玉砕国家日本はどこへ行く

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動画は丁寧に作られているのだが、どうもリニアの悪い点ばかりを大げさに(しかも部分的には間違った情報をもとに)作られているように思えた。

 

 

まず私の考える2大問題点。

 

1つ目。動画が、リニア導入のデメリットだけ取り上げている時点でまず問題がある。そもそも、たとえば車を使うことだって、エネルギーが必要だとか、騒音・環境汚染など、デメリットがある。それにも関わらずみな車を使っているのは、それ以上にメリットの部分を重視しているからである。導入の是非は、メリットとデメリット(それぞれ長期的なものも含む)を考慮して考えられるべきである。また、デメリットとしてあげられることも、対策により問題を最小限にできる場合がある。騒音の問題は、騒音を受忍できる程度まで軽減する対策ができるし、環境問題も、場合によっては、植林活動などある程度対策する方法がある。ただし環境問題は、リニアで考えないといけない課題であるのは確かである。リニアを作る以上、一定の環境破壊は生じてしまうのはその通りである。これは、対策可能かどうかなどもしっかり考えられるべきだし、デメリットとして認知されるべきではある。しかし、これだけをもってリニア反対を唱えるようでは、現実的な解決にはたどり着けない。

 

さらに2つ目。リニアを原発になぞらえて説明している点。何かになぞらえて説明するのはわかりやすくなる場合が多いためまともな説明でも使われることがあるぐらいではある。しかし、一般に、何かに似ているからと言って、それと同一視して考えてしまってよいものではない。何かに例える際は、どういう面で似ているとみているのかを明確にすること、また、その面で例えることが論の流れと照らして適切か考えるステップを踏むことが大事である。この動画では、原発と似ているように印象付けようとし過ぎている時点でまずい。説明をわかりやすくするための例えとして使われているというより、説明が理解できない人でもなんとなくリニアは悪そうだと思えるように誘導しているように取れる。

 

 

ほかにもミスリードになってるところや、疑わしいところがあるので以下に気付いたものを、動画に出てきた順に挙げておく。

 

・速度は2倍にしかならないのに、エネルギーは3倍も使うから、電力の無駄が生じているという猫のセリフがある。ただし、物理を習っていればわかることだが、速さvで進むのに必要なエネルギーは、vの2乗に比例する。つまり、速度2倍にすれば、物理学的にはエネルギーは4倍になるのが当然なのである。そこを3倍に抑えられているのはむしろ電力の無駄を極力減らしていると考えるべきであるし、速度の速い交通機関でエネルギーが必要なのは物理学的に仕方のないことである。(そもそもリニアは浮上しているので摩擦力によるエネルギーのロスは極力減らされている。トンネルの中を定刻通りに走れば、東京の私鉄ではよくある、エネルギーのロスとなる無駄な減速も防げる。また、エネルギーは外部に仕事(物理用語)をすることで、エネルギーロスが生じるといえるのだが、仕事はF×l(その方向に進んだ距離)で与えられる。リニアは地面から浮上するのに電気のエネルギーを大量に使っていると思われがちだが、上下運動が微弱であれば、力学的には、車体の浮上によるエネルギーのロスは小さいといえる。もちろん電磁石に電気を流すようなモデルよりもおおざっぱに考えているので、電力が小さいと上のことから言い切れるわけではないが、「車体を浮上した状態を保つのにエネルギーが必要」という感覚は物理学的に誤っていると指摘したい。)このことを踏まえてもなおエネルギーの無駄というなら、現在の世の中で、速い交通インフラの整備をすすめていること自体に異議を唱えるようなものだと思える。動画の後ろのほうで、「飛行機を使えばよい」と言っているのに、飛行機の使うエネルギーとリニアのエネルギーの比較がされていないのは残念である。

 

・2011年当時のJR東海会長の発言を取りあげているが、一般に、こういうコメントを取りあげられているときは、そのあとで発言の撤回や修正などをしていないか、注意する必要がある。(この注意点については動画の批判ではない)

 

・確かに原発とセットにされているものが、原発に対していまだ反対論のある中で推し進められるのは、まずいと言える。しかし、リニア自体、原発が絶対必要というわけではなく、原発の将来が不明確なままでもリニア建設が決まったのは、原発以外の電力供給源を作れば何とかなるからだと考えるべきだろう。電力供給源の話はリニアの話に限らず日本の大きな将来的課題であり、リニアを作らないにしても、それで解決できる課題ではない。この課題は、リニアを作らなければ解決できるように考えられるべきものではなく、もっと広い視野で考えられるべき問題である。

 

・4:00~頃に、「JR東海が社運をかけて推進している」という猫の発言があるが、JR東海東海道新幹線だけでかなりの利益を上げており、すでに黒字である。また、動画の後ろで会長が「リニアはペイしない」と発言したことが取り上げられている。リニアにJR東海が社運をかけているわけではないことは確かだろう。

 

・「電磁波が危険」と言っているが、そもそも可視光線(我々が目にする通常の光)も電磁波であり、電磁波すべてが危険なわけではない。確かに電磁波には、それこそガンマ線放射線の一種でもあり、電磁波の一種でもある)のような危険なものが存在する。また、身体に危険性があるのではと疑われている電磁波も存在する。しかし、危険だとわかっているガンマ線などはリニアでは生じない(生じていたら大問題である)。身体に危険性が疑われているものについて、「ほとんど研究されていない」(動画内の猫の発言)のは、ほとんど危険性がなく研究をする必要性が低いからであったり、身体に与える影響が小さすぎて因果関係が断定できないほどだからだと考えるのが自然である。身体に危険性がある放射線と、ほとんど影響がない電磁波を一緒に考えないでほしい。原発放射線は、浴びれば危険だとわかっているものであり、5重の壁で密閉するから「安全」と言われてきた経緯がある。それについては、危険性が本来危険なものだし、5重の壁は福島の事故で破られてしまったわけだから、「説明がいい加減だった」というのはその通りである。だが、リニアで発生する電磁波は、そもそも危険性は非常に低いと考えられるし、それに対して一般論:「電磁波は危険なものがある」をおおざっぱに適用してしまってはまずい。一般論を個々の事象に適用する際には、具体的な個々の性質を十分考慮したうえで適用しなければならない、という当たり前のことに注意しなくてはならない。

 

・電磁波について「ほとんど研究されていない」のに、それから「危険」と考えるのは、論理の飛躍である。上で既に書いたので、ご一読ください。

 

・シールドがたった1つだから「危険」というのも、論理の飛躍。

 

・リニアは日本(かつては西ドイツも)しか作ってないと言っているが、(完全に同じではもちろんないにして、)リニアは中国などでも作られていると私は記憶している(リニアモーターカー - Wikipediaを参照)。仮に日本しか作ってなかったとしても、その理由として、技術的壁など、「リニアが無用の長物だから」以外にもたくさん理由はありうる。

 

・リニアの地震対策は、事前にシミュレーションを繰り返し、地震にもある程度強いように計算されたシステムが用いられると当然考えられる。「地震が起きても100%安全です!」とは言えないかもしれない。しかし、それはほかのインフラでも100%安全ではないことを考えるべきである。そもそも大地震が起きている時点で、むしろほかのインフラであれば大惨事になるのがむしろ自然なのである。また、地震に対しては、地上よりもむしろ地下のほうが安全とされていることにも言及したい。

 

・環境破壊は確かにあると思われるが、この点において一番大事なのはどの程度の環境破壊が生じうるのか、であるが、動画内ではほとんど言及されていない。

 

・残土を置く場所・運ぶ方法は、工夫する余地がある。そこは(環境破壊の部分もそうだが)これからしっかり議論されなければならないところであるのは確かだが、まだ「反対」するだけの理由にはなってないと思われる。

 

JR東海の準備書の「できる限り」という言葉は確かに保障にはならない。ただ、JR東海は社会的批判を受けたくはないだろうから、あえて環境破壊を起こすような方法をとったりするようなことはないと考えてよいだろう。

 

・大プロジェクトだし、リニアは直線的な経路を進むから、計画を途中で大きく変えられない、というのは確かにそのとおりである。これは、国のこの手のプロジェクトにはよく聞く話である。事前にボーリング調査などをしてはいると思うが、工事の途中で、予想していなかった硬い岩盤に突き当たり、工事が難航する可能性は十分ある。ただし、動画内で猫が発言しているような「安全性に問題があっても計画を進める」なんてことはあるだろうか?地震については上で述べたとおりだが、これについては、工事をする前から活断層を横切ることはわかっているし、日本にインフラを作る以上、地震の問題はどのインフラにも生じるのだから、「地震で死者が出るからダメ」というのは非現実的な批判である。それ以外で乗客に危険性があるようなことがあれば、すぐに社会問題となり、だれもリニアには乗らなくなる。それこそ9兆円が水の泡だから、安全性を犠牲にして計画を推し進める、なんてことにはなりえないだろう。

 

・経済のためになる=採算が合う ←???

 

・リニアは経済のためになると考える。経済では、基本的に早い者勝ちであり、時間が非常に大切。ビジネスマンが急いで移動できることには大きなメリットがあると考える。このメリットは私が考えたものであり、ほかの人がメリットに挙げているのは見たことがない。それはなぜなら、実際リニアによる時間短縮のおかげで経済が上昇したかどうかを調べるのがそもそも難しいという問題もあるだろう。それに、移動時間が長くかかったところで、計画的なビジネスマンであれば、車内の時間も有効に使えるはずだし、あまり時間短縮のメリットは無いように思える。それでも時間短縮がメリットだと私が思うのは、計画的にスケジュールをこなすサラリーマンを想定しているのではなく、たとえば半沢直樹のような、その場その場で臨機応変な対応を求められるサラリーマンにとっては、時間短縮の意味があると考えているからである(もちろん、あのドラマのようなサラリーマンはいないにしても、臨機応変な対応を求められるサラリーマンはいるだろう)。その場で、急いで名古屋へ行かなくては、経済的損失が出てしまうような状況も、ありうるかもしれない。こういう予想は、あくまで「憶測に過ぎない」と、メリットとしては考えられないことが多い。ただし、インフラを整備するのには、具体的にどういうことに利益があるのか具体的に想定されてなくても、この手のインフラ整備はメリットがあると考えられるのがふつうであり、リニアが、田舎に作られる無駄な道路とは違って、東京・名古屋・大阪という大経済圏を結ぶものであることから考えても、こういう状況が発生することは十分考えられる。統計学的に言えば、1人1人が時間短縮のメリットがある状況になることは少なくても、必ず一定の割合、リニアがメリットになり、経済にプラスの影響を与えてくれる利用者はいると考えられるのである。

 

東海道新幹線の年間座席使用率(平均)を持って、「輸送能力には余裕がある」などと言っているが、時期や時間帯によっては満席で、リニアが代替することにメリットは当然ある。また、東海道新幹線が運航できない場合のバックアップにもなることは各所で言われている。

 

・既に新幹線でかなり黒字を出しているJR東海が破産するだろうか?(ペイしないとしても、破産まで行ってしまうようなプロジェクトをJR東海は自ら推進するのか?)

 

・飛行機を使えばよい、というが、飛行機にもさまざまな問題点がある。危険性・空港から遠いと利用しずらいこと・消費エネルギー・騒音・環境に対する影響など。現に、飛行機があるにも関わらず、新幹線を使って移動する人も多い現状がある。

 

・インフラには便利さより時間を求める人も多い。

 

・中間駅は確かに不便だが、中間駅周辺のインフラは各県が進んですると思われる。その環境破壊は確かにあるだろうが、そこは各県が配慮して、最低限のインフラをするようにすべきことである。また、中間駅の問題は、中間駅を設置するべきかどうかの問題で、リニア全体の計画を推進すべきか反対すべきかにはあまり影響しない。

 

・無償で技術を提供するのは、無償の価値しかない技術だから、というのも論理の飛躍である。そもそも価値がなければ提供することに意味はない。無償で提供することについては、政治的理由など様々なことが考えられうる。

 

 ・動画の最後に、「問題大あり」とterrible君が述べている。問題をたくさんあげれば問題だということではない。問題点の数ではなく、問題の中身が大事である。ここでも、「問題大あり」と印象付けてごり押ししようという意図が見え、非常に残念。

 

主に後半、適当に書いてしまい申し訳ない。

 動画は丁寧な作りであり、また、もちろんリニア導入にはデメリットもあるので、正しく反対をすればもう少し意味のあるものになったであろうことを考えると、残念である。

 

追記8/14 21:30:「経済のためになる=採算が合う ←???」って書いたけど、あれか。経済のためになるなら、利用者がそれだけお金を払う価値がある。つまり経済のためになるなら、採算が合う、ということか?いや、チケット代以上にリニアの恩恵を受ける人だって、チケット代は決められた代金しか払わないはずだし、採算が合わない⇒リニアは経済のためにならない とはならないだろう。