自分の生き方を考えるための日記

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センター政経の囚人のジレンマの問題は出題ミスか?

この話題が思いの外面白かったので、記事にしたいと思います。

togetter.com

 

 

話題の概要:今年のセンター政経に、「囚人のジレンマ」に関する出題があった。この問題における「正解」の選択肢は3だが、その選択肢の記述に論理上の誤りがあるのでは?とネットを中心に指摘されている。

 

3の選択肢を見ていきます。この記事では、読者の皆様が囚人のジレンマの問題を少しは知っていることを前提とします。囚人のジレンマを知らない人は、上で挙げたページの他に、次のページの説明が分かりやすいです。

センター試験で出題された囚人のジレンマゲームの記述に納得がいかない人たち外伝 (2ページ目) - Togetterまとめ

 

3の選択肢の記述の「A国とB国がともに「協調」を選択すれば、両国の点数の合計は最大化されるが、」までの部分は問題なさそうですね。(問題に掲載されている表を見ればわかります。)

そのあとに続く、「相手の行動が読めない以上、「協調」を選択できない」という記述が若干怪しいです。

というのも、「相手の行動が読めない」というのは本当でしょうか。

実は、問題文の上の方に「ここで両国は、自国の得る点数の最大化だけを目指すものとする」と書いてあります。表を見ると、A国が「協調」「非協調」どちらを選んでもB国としては「非協調」を選んだほうが得なので、B国は必ず「非協調」を取ることになります。つまり、A国はB国の行動を読めるので、「相手の行動が読めない以上」という選択肢の記述が誤りだと、ネットの各所で指摘されています。

 

少し脇道に逸れます。飛ばして読んでも良いです。

上の指摘に対し、『「相手の行動が読めない」というのが誤りだとしても、選択肢の記述は正しい』という人もいます。彼らがどのように選択肢の記述を解釈したか見ていきます。

記述は「相手の行動が読めない以上、「協調」を選択できない」ですが、これを「『相手の行動が読めない』ならば『「協調」を選択できない』」という意味だと捉えれば、実は「相手の行動が読めない」かどうかは重要ではない(真でなくても良い)ということになります。

論理学の勉強をすればわかるのですが、今Bが真ということがわかっているとき、「AならばB」は、Aが真か偽かに関わらず正しいからです。

選択肢の記述が「「相手の行動が読めない」ならば「協調を選択できない」」程度の意味であると考えて良いのかどうかがポイントになりますが、私はこうは解釈できないと思います。

普通、この(記述の)ような書かれ方をした時、「相手の行動が読めない」ことが正しいことをもメッセージの中に含まれていると考えるのが自然だからです。*1「相手の行動が読めない」という記述が誤りなのかという問題に戻りましょう。

 

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私は、

『「相手の行動が読めない」という部分は、間違いと言えない』

と思います。

理由を順に説明します。

 

「表を見れば、B国が「非協調」を選ぶのは明らか」という説明は、「B国が、個々のケース(A国が協調する場合、非協調の場合)に分けて問題を考えること」を前提としています。

しかし、「囚人のジレンマ」の問題は、「分析的な見方をして考えた時、結局自国の得る点数は大して大きくならない、損をする」ということを教えているのです。

つまり、B国は、「表を元に、場合分けをして、自国の利益を追求する」という「分析的な見方をした問題解決方法」そのものを採用しない可能性が否定しきれず、囚人のジレンマにおける矛盾を(弁証法的に)解決できるようなメタ的視点から、あえて協調を選ぶ可能性があると考えられます。

(「A国の答えは既に決まっているのだ」と考えてしまうと、B国としては、「非協調」を選択したほうが確かに合理的である。しかし、両国が「非協調」を選ぶより、両国が「協調」を選んだほうが良いというのも、理屈としてある*2。だから、「A国の答えが決まっているものとして」考えるということを放棄することで、B国が「協調」を選ぶ可能性が出てくるのである。)

 

よって、私は、出題ミスとは言えないのではないかと思います。

 

 

もっとも、高校生にこれをやらせるのはどうか?という意見もあるかもしれないですが、それはまた問題が違いまして…。3の選択肢が正解と気づくまでなら高校卒業レベルの論理でたどり着けると思いますし、政経の問題であることを考えれば、実際の政治において協調の場面が多いことからも、3を選べるでしょう。論理的にだけ考えるならば、上で述べたように考えるしかないかもしれないですが、上で説明したように問題はないと思われるので、これで良いのではないでしょうか。

 

 

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追記(1/28):全面的に書き直しました。

*1:しかし、詳しいことはわからないので言語学者にでも任せます。

*2:c.f.論理学で、矛盾からは何でも導かれる(不条理則)というものが登場するが、ある意味で少し似ている気がする